Our World In Dataが収集した広範なデータセットは、人類の幸福における長期的な傾向を明確かつ洞察に満ちた形で示しています。これらのレポートを紐解くと、目覚ましい進歩と、依然として残る根深い課題という、複雑な二重の物語が浮かび上がってきます。
1. 劇的に改善された子どもの命
おそらく最も心温まるニュースは、子どもの死亡率が劇的に減少したことです。かつて、世界のあらゆる場所で、生まれた子どもの約半分が5歳の誕生日を迎える前に亡くなっていました。しかし、過去2世紀にわたり、世界は大きな進歩を遂げ、今日の乳幼児死亡率は歴史上最も低い水準にあります。Max Roser氏が2021年に指摘したように、それでもなお、世界では毎分10人の子どもが亡くなっており、これは年間500万人を超える死に相当します。
この改善は、栄養状態の向上、ワクチンへのアクセス、衛生環境の改善、医療と助産師の利用可能性、より良い住居、経済的繁栄の増加、そして特に母親の教育向上など、多岐にわたる前向きな発展によってもたらされました。しかし、依然として、新生児が直面する死亡リスクは国によって大きく異なり、所得水準が高い国では子どもの死亡率が低いという明確な不均衡が存在します。
2. 飢饉の衰退と食料安全保障の課題
人類の歴史において恐ろしい存在であった飢饉も、近年では劇的に減少しました。20世紀前半以前と比較して、大規模で致命的な飢饉ははるかに稀になっています。これは、技術進歩、経済発展、安定した民主主義の普及の大きな成果の一つと見なされています。しかし、飢饉が現代世界において完全に人為的なものであることを忘れてはなりません。1958年から1962年の中国の「大躍進」の飢饉は、推定3,600万人の命を奪った史上最も致命的な飢饉でした。
飢饉による死亡率の急激な低下は「私たちの生涯における最も評価されていない大勝利の一つ」とされています。しかし、食料不安は依然として何十億人もの人々を苦しめています。2022年には、世界の人口の約10人に1人(約7億人)が深刻な食料不安に直面しており、これは身体的な空腹を経験するのに十分な食料がないことを意味します。中程度または深刻な食料不安を抱える人々の割合はさらに高く、2022年には世界の約29.6%が影響を受けています。
3. 清潔な水へのアクセス:進歩と依然たる格差
清潔で安全な水へのアクセスは、最も基本的な人間のニーズの一つです。しかし、世界人口の4人に1人はいまだに安全な飲料水を利用できず、これは年間100万人以上の死者を出している主要な健康リスクです。
世界の安全でない水源による死亡の分布を見ると、低所得国および低中所得国に集中していることが明らかです。2000年以降、安全に管理された飲料水を利用できる世界人口の割合は増加しましたが、2030年までに普遍的なアクセスを達成するには、現在の進捗では不十分です。サハラ以南のアフリカと低所得国では、安全に管理された飲料水サービスを利用している人口の割合がそれぞれ31%と29%と、特に低い水準にあります。
4. 医療支出と寿命の伸び
政府の医療支出は、1880年にはGDPの1%未満でしたが、20世紀後半には急速に増加し、1970年までに先進国のほぼ全てでGDPの2%を超えました。この医療投資の増加は、寿命の延伸と深く関連しています。データは、医療支出が一人当たり増加するにつれて、人口の平均寿命も延びることを示しています。しかし、高所得国であっても、米国のように医療支出の増加に対する平均寿命の伸びが他の先進国に比べてはるかに緩やかな国もあります。
また、医療アクセスにおける不平等も顕著です。多くの低所得国では、医療保険の適用範囲が依然として課題であり、ポケットマネー支出が医療費総額に占める割合が高い傾向にあります。
5. 出生率の世界的低下と女性のエンパワーメント
世界の合計特殊出生率は、1965年頃の女性一人当たり5人から、現在では2.5人未満へと半減しました。この前例のない変化の主要な理由は以下の通りです:
- 女性のエンパワーメント:教育へのアクセス増加と労働市場への参加拡大。
- 子どもの死亡率の低下:生存する子どもの数が増えることで、親がより少ない子どもを望むようになります。
- 子育て費用の増加:児童労働の減少に伴い、子育てにかかる経済的負担が増大しました。
特に女性の教育は、出生率低下の重要な要因です。例えば、イランでは、1950年には女性の平均就学年数がわずか0.3年で出生率が約7人だったのに対し、2020年には平均9年の就学で出生率が2人未満になりました。
6. 民主的権利の拡大
政治的な権利の面では、過去200年間で民主的権利が驚くほど広まったことが挙げられます。19世紀には、ほとんどの人が民主的権利を持っていませんでしたが、現在では数十億人が民主的権利を享受しています。これは、民主主義が大規模な飢饉を防ぐ上で重要な役割を果たすという興味深いデータポイントと結びついています。データが示すように、1870年から2023年の間に発生した大規模な飢饉のほとんどは専制政治下で発生しており、民主主義国家での大規模な飢饉はほとんどありません。
7. 経済成長と貧困の複雑な現実
過去2世紀は、社会が持続的な経済成長を達成し、貧困を減少させた最初の時代でした。1820年には、世界人口の約75%が極度の貧困状態にあり、これは「ごくわずかな住居スペース、最低限の暖房、栄養失調にならない程度の食料すら買えない」状態を意味しました。しかし、経済成長により、2018年には極度の貧困状態にある人口は9%まで減少しました。
しかし、Our World In Dataは、より高い貧困ラインを使用すると、依然として広範囲に及ぶ貧困の現実を示しています。例えば、**1日30ドル未満で生活している人口は世界人口の84%**にものぼります。これは、世界の大部分が未だ控えめな基準でも貧困の中で生活していることを示しており、世界の貧困の規模を大きく捉え直すものです。
結論
Our World In Dataのレポートは、人類が過去2世紀にわたり、子どもの生存、飢饉の回避、清潔な水へのアクセス、医療、女性の権利、民主主義、そして貧困削減において、信じられないほどの、しかしあまり認識されていない進歩を遂げてきたことを明確に示しています。同時に、何百万人もの子どもたちが不必要に亡くなり、数十億人が依然として食料不安、安全な水不足、医療アクセスの不平等、そして「控えめな」基準から見ても貧困の中で生活しているという、根深い不公平と課題も浮き彫りにしています。
世界は確かに以前よりもはるかに良くなりましたが、依然として課題に満ちており、さらに良い世界にするための大きな可能性を秘めている、という複雑な全体像が示されています。
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